この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
……姉さん姉さんって、春ちゃんがこの人を慕う理由が分かる気がした。
義兄さんと同級生のこの人でも、状況は詳しく知らない。
それでも、皆の幸せを願うと口にして溢れる涙が
決して同情では無いということが、ちゃんと伝わってくる。
「……俺は、泣かないよ」
ニッコリ笑ってみせて、ティッシュの箱を竹中さんに近付ける。
「今頃、春ちゃんが泣いてると思うんだ」
「………!」
「想いはきっと伝わるから、泣く必要は無いんだけど
……春ちゃんも義兄さんも、心が苦しいはずだから」
「………っ」
「俺は、泣かない」
“ ありがとう、ユキ…… ”
……お礼を言うのは、俺の方だよ春ちゃん。
姉貴が死んでから、ちゃんと笑ったのは初めてだった。
最初は感情移入して、春ちゃんを癒したいって思うだけだったけど
本当に救ってもらっていたのは、俺の方だったんだ。
……過ごした時間は本当に短かったけど
涙の理由は、違っても
寂しくて悲しい夜に、貴方は俺の傍にいてくれたから
俺は、また笑うことができた。
そして
義兄さんの笑顔を取り戻す方法を、知ることができたんだ。