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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第17章 約束
「……心残りは、何も無いけど」
「………?」
「だけど、ひとつだけ……」
竹中さんが顔を上げたけど、反対に俺は視線を逸らした。
……こうなることは、予測できていたから
あんなことを言うつもりは全く無かったのに
想いがこみ上げてきて、喉まで出かかってしまったんだ。
“ ……ひとつ、約束してくれる? ”
……伝えてしまったら、きっとまた泣かせてしまう。
直前で、留まることができて良かった。
「………っ」
……だけど、本当は……
「早乙女くん……?」
「俺の姉貴、最後は声が出なくなってたから」
「………!」
「だから、病院のベッドの上で
……皆が見守る中で、俺達に向けてこう書いたんだ」
体の損傷が激しくて、もうどうにもならない中でも
母さんに支えてもらいながら、姉貴は震える手を動かして
1枚の桜色の便箋に、ゆっくりと文字を綴った。