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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第20章 溢れる笑顔
「りょ、遼くんは……!?」
緩やかな下り坂を下りきって、江ノ島大橋の手前に着いた時には
ゼェゼェ言ってしまうほど私は息が上がっていた。
た、体力無いんだってば……っ
「ユキ、遼くんに何を言われてここに…」
「春ちゃんを、1日宜しくって」
「……え!?」
「実は頼まれてたんだ。
俺のトークで、楽しませてあげてって」
「………!」
膝に手を当てて息を整えていた体を、ゆっくりと起こす。
振り返ったユキが、ふっと笑った。
「……ってことにしておくよ」
「………?」
「ねぇ、春ちゃん」
信号待ちの横断歩道の手前で、ユキは立ち止まると
ポケットから右手を出して
「………!」
……顔にかかった私の髪をひと束、綺麗な指が優しく掬い上げる。
「……もう、泣いてない?」
「………!!」
「少しは、笑えるようになった?」
大きな瞳を、切なく揺らして
ユキは私を真っ直ぐ見つめた。
「ずっと心配してたんだ。
春ちゃん、1人で我慢しちゃうから」
「………っ」
「頑張りすぎたら、ダメだよ」