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春雪 ~キミと出逢った季節 ~
第22章 いい女、いい男、もっといい男
「……泣いてねぇよ」
目の前に広がる海を見つめたまま、低い声でそう言った宮本の頬に
また一筋の滴が流れ落ちていく。
「いや、本気で綺麗~に泣いてるんだけど」
「アホか。 ふざけた事言ってんじゃねぇ」
「けどお前、周り見てみろよ。
イケメンのマジ涙に、女達が釘付け…」
「うるせぇ。黙れボケ」
俺と同等の口の悪さ。
会話をぴしゃりと遮断されたから
煙草を灰皿に潰して、宮本の隣りのイスに腰を下ろした。
「はは、すげーな。
映画のワンシーンを間近で観てるみてぇ」
「………」
「あっちから写真撮られてるぞ」
って笑ってみたけど、カメラに収めたくなる気持ちもよく分かる。
グレイのグラデーションTシャツに、羽織ったドット柄のプリントシャツ。
ブラックデニムに、雪斗と同じエスパドリーユを履いて
モデルみてぇなこいつが、普段営業職をしてるサラリーマンだとは
周りではしゃぐ奴らは夢にも思っていないだろう。
……静かに涙する、宮本の横顔は
男の俺から見ても、 “ 美しい ” という言葉が浮かんでくる。