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BLACK WOLF~crime~
第8章 雨ノ夜
最後の力を振り絞ったようにハルちゃんが口を開いた。

弱々しい、震える声で。

その声に閉まりかけてたドアが再び開き桜木さんが顔を覗かせた。

「あ?何だと?」

「はぁ…、黒埼に復讐する前に、俺が死んで…、誰かに発見されたらお前は即刑務所行きだな…。それでもいいのか…?」

寝転んだまま、桜木さんに話しかけるハルちゃん。

その声は、途切れそうなほどにか弱い。


「そうなるとお前の計画は全て台無し…。い、いいのか、それで…?」

「……………。」


何を考え込む桜木さん。

でも、確かにハルちゃんの言う通りだ。

廃墟と言っても誰が来ないとも限らない。

もし見つかったとしたら桜木さんの罪は重い。

誘拐に拉致監禁。

ハルちゃんにこんな大怪我までさせてるんだから、すぐに捕まる。


「……待ってろ」

そう一言呟くと、桜木さんは再びドアを閉めて出て行った。

待ってろ、ってことは何かしらの応急処置をしてくれるのだろう。



……よかった。

これで、ハルちゃんは助かる。

怪我はどうしようもないけど、せめて熱ぐらいは下げれる。



「…ハルちゃん、もう大丈夫だよ。すぐにお薬が来るからね」

ハルちゃんに近づきハルちゃんの頬を優しく撫でた。

先程と変わらず熱いハルちゃんの肌。

「…心配すんな。ぜってぇここから逃げる…、それまではくたばらねぇよ」

「…うん」

ハルちゃんのその一言が私の心を強くしてくれる。

こんな大怪我してるハルちゃんに慰めてもらうなんて、情けない。

私は本当に役立たずだ。








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