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BLACK WOLF~crime~
第9章 君ノ笑顔
真っ黒なスーツに身を包み
威圧的なオーラを放ちながら、ゆっくりと私達のいる方へと歩み寄って来る。
その手には、拳銃が握られていた。
あの拳銃でドアを破壊したのだろう。
さっき聞こえていたあの大きな破裂音は拳銃を打った時の音だったんだ。
「俺の連れに、随分手荒な歓迎をしてくれたようだな…。桜木弘志…」
黒埼さんの口から出た桜木さんの名前。
黒埼さんも桜木さんの事を知ってたの…?
「よくわかったな。この場所が…」
「特定してみろと挑発したのはそっちだ。それに、舞の携帯でバカみたいに俺に連絡して来ただろ?」
「なるほど。逆探知か…。それとも、発信器でも付けてたのか?」
父親の仇を目の前にした桜木さんの表情が変わった。
私の元から離れ、カメラも手放し、今にも襲いかかりそうな勢いだ。
「お前とカタを付ける前に、やらなきゃならないことがあるんでね…」
そう言うと、黒埼さんは桜木さんへの足の進路を変えて私達の方へと向かってくる。
私とハルちゃんの方へ。
…この状況じゃハルちゃんを殴るかも知れない。
でも、これは不可抗力だ。
薬を盛られて理性を失ってしまっただけで、ハルちゃんの意思じゃ…。
「ま、待って…っ、黒埼さん、これは…っ」
黒埼さんのあの狼のような目で睨まれて、私の体は動かなくなってしまっている。
ハルちゃんも荒い息を吐き虚ろな目で黒埼さんを睨んでいる。
「はぁ、は…、く、黒埼…?」
「違うの!ハルちゃんのせいじゃ…っ」
ゆっくりハルちゃんの背後に回った黒埼さん。
━━━━━━ビリッ
「…あっ!!」
ハルちゃんの背後からパルス音が聞こえた瞬間、ハルちゃんの体がドサッとベッドに倒れた。
突然の事に目を丸くしていたが、黒埼さんの手に握られていたのはスタンガンだった。