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BLACK WOLF~crime~
第9章 君ノ笑顔
「あ…、パトカー…」
「もう安心だ。全て終わった…」
終わった…?
終わったの…?
ねぇ、これで本当に何もかも終わったの…?
こんな悲しい結末で、全ては終わったの…?
黒埼さんの腕に抱かれながらチラリと桜木さんの方を見ると、踞ったまま動けないでいる。
時折聞こえる桜木さんの泣き声。
桜木さん…。
桜木さんはただ、本当にお父さんの事が好きだったんだ。
だから悔しくて、辛くて…、こんな事を…。
「ふざけんな…」
「……?」
立ち去る際に聞こえてきた小さな声。
桜木さんの、消え入りそうなか弱い声だった。
その声に立ち止まる黒埼さんの足。
「これで終わりじゃねぇ…、お前が親父を…っ」
さ、桜木さん…?
絞り出すような悔しそうな声に、私の心臓がドキッと高鳴る。
背筋が凍るような嫌な予感…。
「まだ何を━━━━━」
黒埼さんの肩越しに見えた桜木さんの姿。
ゆらりと力なく立ち上がった桜木さんの手にはキラリと光る何かが握られていた。
生気の感じられないその出で立ちが嫌な予感を掻き立てる。
黒埼さんは桜木さんに背中を向けたまま首だけが振り向いてる状態。
「親父の仇だぁぁぁぁぁーっ!!」
「…っ!」
キラリと光るそれは、ナイフ。
桜木さんの手にはナイフが握られている。
そのナイフを握り黒埼さんに向かって走ってきた。
まさか、そのナイフで、黒埼さんを━━━━━━
「黒埼ぃぃぃぃぃっ!!」
「く、そ…っ」
黒埼さんの背中、私を抱き上げてるせいでがら空き。
防衛する為のものが何もないっ。
「ダメ…、黒埼さ…っ」