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BLACK WOLF~crime~
第9章 君ノ笑顔
「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
桜木さんの叫び声。
その叫び声があまりに悲痛で、悲しくて…
一瞬、時間が止まったように思えたが…。
桜木さんが黒埼さんの体にドンッとぶつかった衝撃。
その衝撃で、黒埼さんがバランスを崩して…。
━━━━━━ドサッ
「いっ、た…っ」
私の体が冷たい地面に落下。
その痛みでようやく、現実の世界に引き戻された気がした。
………っ!
一瞬の出来事。
桜木さんの叫び声。
その手にはナイフが握られていて、がら空きだった黒埼さんの背中を目掛けて突進してきて
桜木さんに体当たりをされた黒埼さんはバランスを崩して、私は地面に落下して…。
ナイフを握った桜木さんが、黒埼さんに━━━━━。
嫌な予感がした。
ドラマや映画でよく見る光景。
ハッピーエンドになるはずだったクライマックスでのどんでん返し。
まさか…。
「くっ…、お、前…」
「はは…、親父の、仇だ…」
背後から聞こえたのは、苦しそうな黒埼さんの声と、力なく笑う桜木さんの声。
振り返り黒埼さんを見上げると、目の前には黒埼さんが立っていて、黒埼さんのすぐ真後ろには桜木さん。
まるで体を密着させるようにぴったりと重なった状態で2人共、そこに立ち尽くしているが…
「く、黒埼さ━━━━━━」
ドクンッ、ドクンッ…
心臓の鼓動が高鳴る。
さっきまでの安心感が消えていく。
そして…
「…最初からこうするつもりだったんだよ。警察が何だ…。刺し違えてでも親父の仇を取るって」