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BLACK WOLF~crime~
第9章 君ノ笑顔
「黒埼さ…」
「…ま、い」
「黒埼さんっ!」
私の呼び掛けが聞こえたのか黒埼さんの口がゆっくり動いた。
その唇は私の名前を呟くような動き。
「黒埼さん…、やだぁ…っ」
精一杯の動きで私の名前を呟いてくれた黒埼さんが、まるでこのままいなくなってしまいそうで…
私の瞳からは大粒の涙がボロボロと零れだす。
息も微かで、私の名前を呟くのが精一杯のようだった。
「お、俺、は…っ」
「な、何?黒埼さん…」
こんな状態にも関わらず、黒埼さんは私に何かを伝えようとしている。
黒埼さんの口許に耳を近づけて黒埼さんの言葉を聞き取ろうとした。
こんな時に何を━━━━━?
「俺は…、お、お前をなか…っ、泣かせてばかり、だな…っ」
「…………っ!」
何よ…、こんな時に…。
何で今になってそんな事言うのよ…。
そんな、最後の台詞みたいな言葉…、聞きたくないよっ!
「死なないで…、黒埼さん…っ、私を1人にしないでっ!!」
この世から黒埼さんがいなくなるなんて考えたこともなかった。
私の側から黒埼さんがいなくなる…
それがこんなに…、こんなに怖いことだったなんて…。
「黒埼さん…っ、やだ…っ!やだぁぁぁぁぁっ…」
もし、この世から黒埼 明という人間が消えたら…
きっと今度こそ、私の心臓は粉々になってしまう。