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BLACK WOLF~crime~
第10章 最後ノ恋
ハルちゃんの背中のすぐそばまで追い付いた。

小さく息を切らしながら、入院着を着たハルちゃんの背中に私は…



「あ、ありがと…っ」



その一言を伝えるので精一杯だった。

…………っ!


本当はもっと他に言わなきゃならないことはいっぱいあるのに、ハルちゃんの姿を前にすると言葉が出てこない。

ハルちゃんには返しきれない程の恩がある。

なのに、言葉が何も出てこない。

「あの、それと…」

話しかける私に対し、ハルちゃんは背中を向けたままだ。

私の方を振り返る様子もない。


「ハルちゃん…」

「今、顔見たら…、決心が鈍る…」

「…………………っ」




松葉杖を付いた後ろ姿。

漏れたその言葉は…、私の心に突き刺さった。





「舞を見てたら、あの男からさらいたくなる。でも、お前を泣かせるようなことはもうしたくない…」

「あ……」

「いくら薬を飲まされて歯止めが効かなくなったとは言え意識はあった。…泣きながらあの男の名前を呼んでた事も覚えてる…っ」


桜木さんに飲まされたあの薬でハルちゃんが私を抱いたときだ。

私は無意識のうちに黒埼さんの名前を呼んでた。

ハルちゃんに抱かれながら、ハルちゃんの腕の中で黒埼さんの名前を…。


「なのに黒埼は…、俺がお前を抱いたことに対して何も咎めなかった。それどころがあれはお前の意思じゃなかったって余裕気味に…」

「あれは…」

本当は凄く怒ってたみたいだったけど。

ハルちゃん、気絶させられながらもちゃんと覚えてるんだ。

あそこで何が起きたかも、全部。


「参った。勝てねぇよ、俺」









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