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BLACK WOLF~crime~
第10章 最後ノ恋
ハルちゃんは私にとって、誰よりも大切な人だったよ。
それから数ヶ月して、黒埼さんは退院。
ハルちゃんは術後の回復の関係で退院はもう少し後になりそうだった。
退院出来てもしばらくはリハビリに通わなきゃいけないらしい。
私は、ハルちゃんのお見舞いには行けないでいた。
どんな顔をしてハルちゃんに会えばいいかわからなかったから。
あの日の、ハルちゃんの最後の台詞や声が頭から離れなかったから。
「黒埼さんと幸せに、か…」
「あ?何か言ったか?」
「いえ…」
黒埼さんの退院日、黒埼さんを迎えに行った帰りの車内。
病み上がりだというのに、黒埼さん自らが車を運転して私は助手席。
「タクシーの方がよかったんじゃ…」
「久しぶりに車で走りたい気分だったから」
…黒埼さんらしい。
どうせ黒埼さんの事だからこのまま帰っても養生もせずに仕事に戻るんだろうな。
車を走らせる黒埼さんの横顔を見ながらそう思った。
「あの幼馴染みは?もう退院したのか?」
「いえ、ハルちゃんはまだ…」
「見舞いには行ったのか?」
「……………いえ」
黒埼さんに気を使ったとかじゃない。
拳を握り締め気持ちを押し殺したハルちゃんの気持ちを考えると、私の勝手な心配だけで会いには行けなかったからだ。
ハルちゃんは私に"黒埼さんと幸せになれ"と言ってくれた。
そんな優しいハルちゃんの気持ちに水は差せない。