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BLACK WOLF~crime~
第11章 BLACK WOLF
あー、そういえばその会話の真っ最中だったっけ。
パスタ、か…。
「ミサ、ごめん。今日は家に帰る」
「先約かぁ~!ん~、わかった。もしかして、彼氏とか?」
…ミサの頭の中は恋の事でいっぱいだ。
バタンとロッカーを閉めた。
「彼氏、って訳じゃないけど…、待ってる人がいるから」
「それを彼氏って言うんじゃないのぉ?今日は記念日か何か?」
記念日とかそんなんじゃない。
ただ、私を待ってくれてる。
特別な日じゃなくても、私を待ってくれてる人がいる。
その人の事を考えてるだけで、心が温かくなって、情けないけど無意識に笑顔が溢れてしまう。
「今度、ちゃんと埋め合わせするから」
「あ~、その余裕がムカつく~」
そう。
記念日やイベントなんかなくても、私を待ってくれてる人がいて
私が帰るのを待ってくれてる。
私の帰る場所。
ミサにバイバイと挨拶をし、ロッカー室から足早に駆けて行く。
おかしいでしょ?
足取りがこんなに軽やか。
「いいなぁ、舞ちん。ミサもそんな素敵な出会いがしたいもんだわ━━━━━ん?」
着替えを終えて帰ろうとするミサの足下に転がる小さな何か。
何だろうと拾い上げると、それは
「あ、舞ちんの名札」
それは、この会社の制服につけるクリップタイプの名札だ。
どうやら着替えてる最中に落としてしまったみたいだ。