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BLACK WOLF~crime~
第2章 森ノ蝶
その日は昨日と同じ男女1ペアでの作業となり、私は桜木さんとペアを組むことになった。
朝礼中もずっと、あの嫌な視線とヒソヒソ声が付きまとっていた。
工場長さんも終始私と目を合わせてくれなかった。
嫌な気分になりながらも気持ちを切り替えて仕事に励もうと思ったのだが…
はぁ…。
仕方ないとは言え変に好奇の目で見られるのは気持ち悪いなぁ。
こうしてる間にもあっちこっちから視線が刺さる。
「どうしたの?相沢さん。元気ないね?」
「えっ?あ、すいませんっ!」
と、ヤバイヤバイ。
仕事に集中しようとした矢先にいきなりぼんやりしちゃった。
無意識のうちに手元が疎かになってしまった…。
「あの…、昨日はすいませんでした。突然いなくなってしまって…」
「あぁ、びっくりしたよ~。事故にでもあったんじゃないかって」
……桜木さんは普通だ。
私の目を見て焦ることもないし気遣う気配もない。
視線を泳がせることもない。
桜木さんは普通だけど、どうして他の人は…?
私の気のせいかな?
「そうだ、相沢さんのことでちょっと聞きたいことがあるんだけど?」
「あ、はい。何ですか?」
「相沢さんの彼氏って、もしかしてあの…、黒埼 明さん?」
「━━━━━━━えっ?」
桜木さんの口から出てきたのは
黒埼 明。
黒埼さんの名前だった。
え…?どうして…?
どうして桜木さんが黒埼さんの名前を知ってるの…?
何で私の恋人だと知ってるの?
桜木さんと黒埼さんには何の接点もないのに、どうして桜木さんの口から黒埼さんの名前が…?
呆気に取られてる私に桜木さんは更に話を付け加える。
「昨日、黒埼さんの車から相沢さんが降りて来るのを見たって人が…」
ドクンッ、ドクンッ
作業をしている手が震える。
嫌な汗が額にじんわりと滲んだ。