この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
BLACK WOLF~crime~
第4章 海ノ魚
プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…、プルルルル…
何度コールしても出る気配がない。
これだけコールしても出ないって事は、もうアパートにはいないのかも。
今なら帰れるかも知れない。
受話器を戻しソファに座り直した。
…今なら帰っても誰もいないかも知れない。
でも、もしまだ黒埼さんがいたら?
もしかしたら、さすがの黒埼さんも私の携帯に勝手に出るなんて事はしないのかも。
黒埼さんがいたら口論になって、あのアパートを解約されてまた黒埼さんの邸に監禁されるかも知れない。
でも、ほとぼりが冷めるまでここでご厄介になる訳にもいかないし、だからと言ってハルちゃんの元へなんか行けないし。
考えれば考えるほど嫌な考えしか浮かばない。
気を落ち着かせる為に桜木さんが入れてくれたホットミルクを飲んだ。
…温かい。
心まで温まりそうだ。
黒埼さんと言い桜木さんと言い、男性って花の香りが好きなのかな?
黒埼さんの邸はバラの香りがして、桜木さんのこの部屋はジャスミンの香りがする。
ハルちゃんの部屋はミントの香りがした。
でも、私はこのジャスミンの香りは嫌いじゃない。
甘くて爽やかで桜木さんにぴったりのいい香りだ。
桜木さんが入れてくれたこのホットミルクのせいもあるかもだけど、冷えてた体が暖まって何だか気持ちが落ち着く。
ハルちゃんに謝らなきゃとか、アパートにはまだ黒埼さんがとか、いろいろ考えなきゃならないのに、心が暖まって、体もポカポカして、何だか凄く気持ちがいい。