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快楽の奴隷
第1章 プロローグ
駅に隣接された大型書店の扉を押すと、紙の匂いを孕んだ温かい空気が押し寄せて沼田花純(ぬまたかすみ)の冷えた身体を包むように迎え入れてくれる。
今日の彼女の服装は異質だった。母親が買ってきたまま押し入れに眠っていた編み目の荒い野暮ったいタートルネックのセーターを着て、帽子を目深に被り、首元のマフラーは口許まで覆うように巻かれている。
『このセーターが役に立つ日が来るとは思わなかったな……』
母の希望とは違う活用法だろうが、感謝せずにはいられなかった。
花純はうつ向き加減で足早に店の奥へと進んでいく。
滅多に来ることのない遠方の書店ではあったが、目的のものはすぐに見つけられた。
『あった……』
辺りを少しだけ気にした後、文庫本のコーナーに平積みされたその一冊を手に取る。
『嗤う人形 著:幻野イルマ』
最近話題になっているこのラブロマンス小説は、激しい性描写ゆえ十八歳未満の花純には購入することが出来ない。
この小説は年の離れた従兄妹同士の愛が描かれている。元々は官能小説として発刊されたが、衝撃的で切ないストーリーが話題を呼んで人気に火がついた。
今日の彼女の服装は異質だった。母親が買ってきたまま押し入れに眠っていた編み目の荒い野暮ったいタートルネックのセーターを着て、帽子を目深に被り、首元のマフラーは口許まで覆うように巻かれている。
『このセーターが役に立つ日が来るとは思わなかったな……』
母の希望とは違う活用法だろうが、感謝せずにはいられなかった。
花純はうつ向き加減で足早に店の奥へと進んでいく。
滅多に来ることのない遠方の書店ではあったが、目的のものはすぐに見つけられた。
『あった……』
辺りを少しだけ気にした後、文庫本のコーナーに平積みされたその一冊を手に取る。
『嗤う人形 著:幻野イルマ』
最近話題になっているこのラブロマンス小説は、激しい性描写ゆえ十八歳未満の花純には購入することが出来ない。
この小説は年の離れた従兄妹同士の愛が描かれている。元々は官能小説として発刊されたが、衝撃的で切ないストーリーが話題を呼んで人気に火がついた。