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快楽の奴隷
第12章 『嗤う人形』
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1997年。
今から20年近く前。
まだ高梨が小説家になるなどとは夢にも思っていない大学生の頃。
彼の代表作になる『嗤う人形』の原体験となる出来事が起きた。


高梨は成人式の帰りに玩具店を訪れていた。
彼が子供の頃は猿がタンバリンを鳴らすようなおもちゃが流行っていたが、今の子供たちはそんなものに興味はないらしく、店頭にはもっと精巧なからくりで出来ているおもちゃが並んでいた。

羽織袴の姿の彼は玩具屋で完全に浮いていた。
子供たちはゲームコーナーやカードコーナーに集まっている。

高梨はそれらのコーナーを通り過ぎ、魔女っ子変身グッズや人形が並んでいる女の子の玩具のコーナーに進む。

彼は従妹の宏世へのお土産を探していた。

「いらっしゃいませ。プレゼントですか?」

なんの業界でも女性のコーナーに男性が入ると店員というものは近寄ってくるものである。
相手はそれらの商品知識がないであろうし、何より購買意思がある場合が多いからだ。

「ああ。小学六年生くらいの女の子なんだけど。どんなものがいい?」

例に漏れず知識のない高梨は、取り敢えず店員に訊ねた。
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