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快楽の奴隷
第12章 『嗤う人形』
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花純は嗤う人形の表紙ををじっと見詰めていた。

光沢のある木製のテーブルの上に置かれたフランス人形、その隣に薔薇の活けられた花瓶が置かれている表紙だ。
フランス人形はもちろん笑ってなどなく、無表情でこちらを見詰めている。

官能小説とは思えない、静かでどことなく不気味な表紙だった。

『確かこの人形は主人公がヒロインにプレゼントした人形だったはず……』

ヒロインとそっくりの顔をしたフランス人形をプレゼントし、その日から歪んだ二人のロマンスが始まる。
二人の愛は誰にも秘密で、ヒロインが結婚する前夜まで続いていく。

結婚相手は主人公ではなく、ヒロインが勤める会社の社長の息子だったはずだ。

花純は複雑な思いで表紙の笑わない人形を見詰めていた。

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