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快楽の奴隷
第13章 ミューズ
激しく叫んで睨んだその目は、憎しみさえ籠っていた。

「私はっ……高梨さんと出逢って……幸せが何か、分かったんですっ……高梨さんに抱かれ、高梨さんの作品のお役に立て……生きる悦びを見つけたんですからっ!!」

涙が頬を伝い、筋を作っていった。
頭に血が上り、くらりとするほど怒りに脳が支配される。

「辛い思いだなんてっ……二度と言わないで下さいっ!!」

激しく昂った顔を見て、高梨は言うべき言葉が見つからなかった。
言葉を紡ぐプロが言葉の無力さを感じる。

「済まなかった……」

それだけ言って高梨は花純を抱き締める。
泣いて体温が上がった彼女が幼い雛鳥のように思えた。

そして封印していた想い出や感情の蓋が開く気がした。
古疵(ふるきず)が疼き、心拍が乱れる。
過去に戻れる人間はいない。
しかし過去の過ちは大いなる力を与えてくれる。
同じ過ちを繰り返さないという、学習能力だ。
高梨が確かな決意を内に秘めながら抱き締めているということなど、このときの花純は知る由もなかった。
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