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快楽の奴隷
第14章 下卑た文学
官能小説界での話題など、一般の人は知らない。
いや、一般の人のおろか、読書家達でもあまり官能小説の世界などは知られていない。
有名な推理小説家や純文学作家、エッセイスト、恋愛小説家の名前を知っていても、有名な官能小説家の名前などほとんどの人が知らないのが実情だ。

『恋愛小説家を見かけたら……』などというタイトルはロマンチックな想像を掻き立てられる。
しかし文頭を『官能小説家』に置き換えただけで『通報』的な笑いが生まれてしまう。
推理小説家が人を殺して作品を書いているのとは違うように、多くの官能小説家も実際の変態的な性体験を元に書いている訳ではない。
とは言え推理小説家のうちで殺人者を探すよりは、官能小説家の中で好色な人間を探すのは容易であることは間違いない。

高梨もそのいい例だ。
花純という創作の女神、ミューズを手に入れた高梨はそれまでにない意欲作を完成できたのだから。
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