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快楽の奴隷
第14章 下卑た文学
高梨の新刊が話題になったとは言え、それは所詮官能小説界という、文壇から見下された下卑た世界での話だ。
その見下しが不当であるかどうかは、問題ではない。
現に劣るものとして烙印を押されている事実がある限り、書店内でも日陰暮しを強いられる。
高梨の新刊は、出版界では多少の話題になっても、世間一般では話題になることも、書店の入り口付近の特設コーナーに山積みに置かれることもなかった。
だから花純はいつものごとく書店の隅に追いやられたそのスペースへと足早に進む。
『あったっ……』
黒い背表紙が多いそのコーナーに平積みされた幻野イルマの新刊を見つける。
既に作者で恋人である高梨から渡されていたが、書店で逢うとやはり感動が違う。
表紙は立山の描いたイラストだ。
山間の湖畔、遠くに見えるコテージ。
そして中心には裸で背を向けた女性が描かれている。
『私の……裸なんだよね、これ……』
緊張して辺りを確認してしまう。
顔が描かれていないからこの後ろ姿のヌードを見て花純と気付く人間はまずいない。
そうわかっていても恥ずかしくて身体が熱くなってしまう。
自分の背中というのはまず見る機会がない。
ましてや裸の背中なんて意識したこともなかった。
その見下しが不当であるかどうかは、問題ではない。
現に劣るものとして烙印を押されている事実がある限り、書店内でも日陰暮しを強いられる。
高梨の新刊は、出版界では多少の話題になっても、世間一般では話題になることも、書店の入り口付近の特設コーナーに山積みに置かれることもなかった。
だから花純はいつものごとく書店の隅に追いやられたそのスペースへと足早に進む。
『あったっ……』
黒い背表紙が多いそのコーナーに平積みされた幻野イルマの新刊を見つける。
既に作者で恋人である高梨から渡されていたが、書店で逢うとやはり感動が違う。
表紙は立山の描いたイラストだ。
山間の湖畔、遠くに見えるコテージ。
そして中心には裸で背を向けた女性が描かれている。
『私の……裸なんだよね、これ……』
緊張して辺りを確認してしまう。
顔が描かれていないからこの後ろ姿のヌードを見て花純と気付く人間はまずいない。
そうわかっていても恥ずかしくて身体が熱くなってしまう。
自分の背中というのはまず見る機会がない。
ましてや裸の背中なんて意識したこともなかった。