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快楽の奴隷
第14章 下卑た文学
『今話題の女性向け官能小説「湖畔を抜けて森の中へ」。
官能小説家幻野イルマの最新作である。
この作品を読み、最初に感じたことは作家幻野イルマが過去の人間になったな、ということだ。
本作は老いらくの恋で色ボケした作者の甘ったるくて退屈な日常を陳腐な言葉で飾りつけた駄作である。』

冒頭のそこまで読んだだけで花純の脳の芯は燃えるように熱くなり、怒りでくらりと目眩すら覚えてしまった。
本を閉じ、この雑誌の出版社に抗議の電話をかけようという衝動に駈られたが、視線は読みたくもないその先を追ってしまっていた。

そこには数々の罵詈雑言に茶化したようなジョークを交えて綴られていた。
目頭が熱くなり、悔し涙が溢れ落ちる。
心臓を素手で捕まれ、ぐちゃりと握り潰されるような苦しみを感じた。

そして花純を決定的に傷付け、奈落の底に突き落とす言葉でその記事は結ばれていた。

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