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快楽の奴隷
第15章 求めすぎる心
結果的に本の雑誌に掲載された批評は『湖畔を抜けて森の中へ』の売り上げに影響することはなかった。
センセーショナルな大人の恋愛小説はその後も順調に売り上げを伸ばし、書店でも官能小説のコーナーではなく、一般書籍のコーナーに並べられていた。
しかし花純の心の中には墨を落としたように淀んでいた。

『「嗤う人形」のような妖しく美しい世界は、ここに存在していない』
聴いた言葉じゃないのに、耳の奥で何度もこだましていた。
自分の魅力では高梨の本当の力を出し切れないのではないかとさえ考えてしまう。
『嗤う人形』のヒロインという見えない敵は、花純の心をどす黒い嫉妬で塗り潰していった。

もはや『湖畔を抜けて森の中へ』のポスターを見ても、ネットで評判になっていても、心は晴れない。
むしろ苦しい思いにさえなっていった。
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