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快楽の奴隷
第16章 応えすぎる心
『湖畔を抜けて森の中へ』はその過激な内容と切ないストーリーで話題を集めていた。
五万部も売れればヒットとされる官能小説界で、この小説は電子書籍を合わせて十万部を突破するヒットとなっていた。
世間一般で誰もが知ってる作品というのはほど遠いが、読書家達の間では話題になっていた。

『ちょっとだけなら……いいよね?』

ネットで評判を見るという行為は大抵ろくな結果を招かないが、ついつい花純は調べてしまう。
いい評価を与えてる読者も多いが、中には以前の評論家の言葉を真似したような批判的なメッセージも見受けられた。

「何も分かってないくせに偉そうに」

そんなコメントを見て、花純は鼻で笑う。
以前の彼女なら憤慨して頭に血を上らせていたであろうが、今は違った。
高梨に諭され、こういった批判の言葉も軽く受け流せるようになっていた。

しかしそんな余裕も出てきた花純の心を揺らがせる出来事が起ころうとしていた。
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