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第16章 応えすぎる心

高梨の編集者、森崎に呼ばれた花純は近所の喫茶店に来ていた。

「わざわざお呼びだてしてすいません」
「いえ……」

いつもの美人台無しのテンションはなく、疲れた表情を浮かべていた。
いつもそうしていれば女としては得するのに、と花純は気楽なことを考えながらウエイトレスにホットコーヒーを注文した。

「それで、私に何の用でしょうか？」

高梨に関することというのは察しがつくが、用件はまるで読めない。

「その……幻野先生のことなんスけど……」
「はい」
「何と言ったらいいか、その……」

歯切れの悪い彼女を見るのははじめてで、花純はようやく何か重大なことなんだろうかと不安を過らせた。

「いや……こんなことを言うのは沼田さんにも先生にも失礼だとは分かってるんスけど……」

言い淀んだ彼女は景気をつけるようにアイスコーヒーをストローでちゅーっと勢いよく吸い込んだ。