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快楽の奴隷
第17章 闇と光
見詰めあったあと、少し照れ臭そうに高梨はキスを落とす。

「俺は花純に出逢うまで知らなかったんだ」

彼の目は真っ直ぐに花純の瞳を見詰めていた。

「幸せというのがこんなに怖いものだなんて……」

その言葉に花純は心臓が止まった、気がした。

「変な高梨さん……」

けれど花純は笑顔を作れた。
素知らぬ振りで指を絡めることが出来た。

「けど私も怖いかも。怖いくらいに高梨さんが好きだから……」

辛うじて出来た作り笑顔を見られたくなくて、花純は顔を高梨の胸に押し当てる。
もっと愛してることを伝えたくて、二人は身体を弄りあい、求めあう。
怖さを消すために抱き合えば余計に怖くなるのを知らない年齢でもないくせに、その夜、二人は激しく繋がり、幾度となく果てた。
互いの名前を呼びあい、罪深い穴でまでも繋がり、一つになりたがった。


そして夜が明ける直前、花純はベッドで静かに身を起こす。
隣で寝息を立てる高梨は猛禽類の鋭さを微かに残したまま、油断しきった寝顔を見せていた。

溢れてきそうな涙を堪え、花純はソッとその唇にキスをする。


「ありがとうございました……さようなら……高梨さん……」


この夜を境に、花純は高梨の前から姿を消した。
何一つ、彼に言葉を残さずに。
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