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快楽の奴隷
第18章 なくして、得るもの
一般的に見れば妥当なところに着地した一応のハッピーエンドに見えるが、花純にとっては絶望的な結びだった。
高梨が作家を辞めるということを暗示したような結末に呼吸をすることも忘れ、様々なことが頭を過る。
そして花純には伝わっていた。
これが自分に向けられたメッセージであることを。

冒頭の『この小説を愛する人に捧げる』というのは私に対する語りかけの始まり。
そしてこの結末で、その語りかけが終わっている。
つまり、高梨が私に伝えたかったことは、作家としての絶筆……

裸の花純は寒さとは無関係に、身体が震えた。
今すぐに高梨の元へ駆け付けたい。
その突き上がる衝動を必死に抑える。

『駄目っ……今は、まだっ……』

手を固く握り、膝の上に置く。
固く瞑った瞳は痛みを堪える表情そのものだった。

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