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揺れる恋 めぐる愛
第8章 羨望と嫉妬
私の周りの人波が駅の方に向かい、

その乱暴な渦になすがままに巻き込まれていく。

人波にのまれながらも躰を捩って、

何度かジャンプしながらその方向を見つめる。

私の瞳に映るのは手の届かない遠くにいる、

チラチラと見え隠れする気になる二人の後ろ姿。

やっぱり……

その男性の方は間違いなく主任だと思う。


その時二人の波が一気に揺れ、

背の高い男性が浴衣の女性を引き寄せたように見えた。寄り添う二人。

女が男の方に顔を向け、男が見下ろす。

そして二人を飲み込んだ波は……

私のいる所とは反対の方へ消えていった。


すごく親しそうに見えた。大切そうに守っているようにも…

その女(ひと)は誰?

疑問と嫉妬が頭の中を何度も駆け巡った……

それなのに声をかけることも、確かめることもできないまま、

私達はそれぞれの人の波にのまれて離れ離れになった。


胸がぎゅっと締め付けられて、気持ちが一気に重くなった。

来なければよかった。あんなもの見たくなかった。

自分なりに踏み出そうと思っても……

私は結局何度でもこういうめにあう。


イタイ……

心を開いた人に裏切られるのは……

もうイヤダ。


混乱し、ぐちゃぐちゃになった気持ち。

その行き場を見つけられないまま、花火から帰った。
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