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揺れる恋 めぐる愛
第8章 羨望と嫉妬
主任はそれからいつものように少しして玄関に現れた。

その姿をなんとなく確認し、ロックを解除してドアを開ける。


いつもなら、余裕な顔をして当たり前とばかりに、入ってくるはずなのに……

その時私の目に飛び込んできたのは蒼白な顔をして茫然と立ち尽くす

いつもらしからぬ主任だった。

そして眉間にしわを寄せ、死んだような目をしているのが見えたのは

ほんの一瞬の事で……

伸びてきた腕に捕えられ大きな胸に無理やり閉じ込められた。


鷲掴みされた腕をそのままに抱きすくめられた……

次の瞬間にはっとしたように抱擁を解き、私をしばらく穴が空きそうな程見つめてから

再び抱擁され、その力は強まることはあってもゆるむことはなく……

そして、いつしか小刻みに震えていた。


何に耐えているのだろう?

私は顔を上に向けて主任の様子をうかがおうとしたが、

その動きを読まれたのか頭を片方の手のひらで押さえつけられ、

より胸に押し付けられた。


基本いつも余裕のこの人が、どうしてこんなことに……

何がこの人をこんなに動揺させているのか……

私は何が起きたのかわからないまま、

混乱した気持ちを落ち着けようと躍起になった。


それから私がしたのは……

無駄な事をするのをやめ背中にそっと腕を回してなすがままになった。

しばらくそうやって、震える主任を……

ただ抱きしめて続けていた。
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