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揺れる恋 めぐる愛
第12章 普通と特別
「珍しい?」

彼の低い声が信じられないと言わんばかりより低く響く。

「そうよ、あなたがそうやって意識か無意識かわからないけど

隠して大切にしようとする女性ができたなんてね。

私は取って食ったりしないのに」

彼が一瞬こちらを振り向き、見開いた眼で私をチラリとみてから

一歩後ずさりその人の視線を逸らす。

「隠してなんか……」

「ほらぁ~、その距離」

指をさしながら楽しそうに見える。

「そんな近くに、そもそも女を寄せ付けなかったじゃない。

仕事はそつなくこなす癖に、好意をもって寄ってくる娘を

業務外では容赦なく切……」

「おい、あなたは俺をどんな鬼畜だと思ってたんだよ?

そもそも、寄ってくる女なんて

ろくでもない奴しかいなかったんだぞ!!」

「そう?じゃ、紗栄子さんとか、

しーちゃんはあなたの中でろくでなしなんだ」

「はあ????どっちも関係ないだろう?」

「ほら、頭がいいくせに、

他人が、いえ、女の自分に向ける感情に関しては朴念仁なんだから。

ウフフフフ……」

どんなことに対しても堂々としていて、そつがないはずだったのに、

そこには見たこともない彼がいる。

痴話げんかに見えるそれを、私は上がる口角を意識して抑えつけながら

彼の背中越しに眺めていた。
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