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揺れる恋 めぐる愛
第13章 動揺と安定
「……兄さんなんかわかんないけどゴメン」

「いや……」

しばらくの沈黙。私は沈んだ意識のなかで、

彼の膝の上に頭を乗せ横になっていた。

「別に……

お前が悪いわけじゃないんだろう、たぶん」

彼が再び私の頭を撫で始めた。

周期的なリズムで指先が頭皮をなぞる。

少し心地いい感覚に蕩けそうになりながらも、

今、目を開けることに居心地の悪さを感じて

心掛けて規則的な呼吸をして寝たふりをした。

会話が途切れ、キーンという音だけが脳裏に響く。



「それにしても、本当に久々だな?」

「うん。たまたま近くにいた時、母さんと電話で話してたら

兄さんがたぶん来るって……」

「そうなのか?」

虚ろな意識の中で、大希さんは確か一人っ子のはずなのに、

兄と呼ばれていることの違和感。


この人はいったい誰なんだろう?

声も似ていて思わず先輩と叫んでしまったものの

絶対に先輩じゃない。それは分かる。

でもこんなに同じ顔の人がいるものなんだろうか?

どうして私は今日、わざわざ壊れるために

ここに来てしまったのだろうか?


そういえば、女の人とその息子と一緒に住んでいたんだっけ……

なら、その息子が大希さんより年下なら……

『のの……』

脳裏で私を呼ぶ声が聞こえた。

もういやだ……

私はその声に引き寄せられるように

再び暗い闇に落ちていった。

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