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揺れる恋 めぐる愛
第14章 曖昧と明確
俺はもう充分堪能したからとガトーショコラがまだ少し

うちの冷蔵庫にある。

いくら何でも今夜中に食べるべきだろう。

苦くて甘い感情を口移しにされたあの味は

これから私の胸を甘く蕩けさせる味として

記憶に残るのだろうか?


ほのかに幸せを感じる妄想をしながらも歩き続け、

あと5分程でもうすぐ家に着く

というところでふと背後に視線を感じた。

さっきまでそんなことはなかったはずなのに、

何なんだろう?


気になって歩きながら振り向くと、

遠くから低い声で名前を呼ばれた。

「藤木さん~」

親し気に私を呼ぶが声だけでは誰かわからない。

これは誰なの?立ち止まり、声の方に向いて身構える。

こちらからは目を凝らさないと見えない

生垣の向こうから太陽の残光を背に

ぬっと背の高い影が現れ、こちらに向かって近づいてきた。


目を細めた……

でもそれが誰だか私にはわからなかった。

「なんで連絡くれないの?

ずーっとずーっと、長い間待っていたんだよ……」

訳が分からない。

ずかずかと大股で歩いてくるその人(おとこ)が怖くて

ある程度まで来たところで意識を後ろに向けながらも

距離を取ろうと足早に歩き始めた。

「拾ってあげたキーケースに僕の連絡先を入れたのに……

どうして無視するの?」

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