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揺れる恋 めぐる愛
第3章 理解と誤解
それじゃ、まるで……

でもこの人はそんな人じゃない。

そう、頭の痛い私にだってそれくらいはわかる……

あの夜私は……

先輩を確かに裏切ることになった。

私は目を閉じたまま低い声色で突き放した。

「私はあなたの物じゃないです……」

髪を撫でていた手が止まる。しばらくの沈黙。


そして、静かに手が離れた。主任の哀しげな低い声が部屋に響く。

「人は決して他人のものには……

ならない。誰のものでもない。

戸籍で縛れても、居場所は自らが決めるもの。

男がお前は俺のものと言おうが、所詮それは女が望むからだ。

それは女にも言えるだろう……

違うか?」


私は熱で聞いていないふりをして、

目を開けずにそのまま何も答えなかった。

「今は人のものでいいさ。

その事実を今俺にはどうすることもできないから……

熱のお前にこんなことを言ってもおそらく高熱で

ほとんど覚えていないだろう?」

また、髪に柔らかい何かが触れた。再びビクつく私。

「もうしばらく寝てろ。

こんな時ぐらい、誰かそばに居て欲しいだろうから、

このまま俺が居てやる……」

先ほどの言葉の意味を考えたくなくて、私はすぐさま意識の闇に自ら堕ちた。

髪を撫でられる大きな手を心地いいと思いながら……
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