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喪われた記憶
第12章 月琴の過去
お母さんが入院してから、
家事全般はりーちゃんがやっていた。
私も出来るだけのことは手伝っていた。
最初は大変だったけど、
慣れたらだんだん楽しくなってきた。
でも……
一つだけ変わってしまったことがある。
お父さんの帰りが、異常に遅くなったこと。
前は夜7時までには家に帰っていた。
それなのに、今は深夜とか。
最悪な時は帰ってこないこともあった。
りーちゃんに聞いたら、
『お母さんの分まで働いてきてくれてるんだよ』
そう言ってた。
『お父さん、凄いね』
そう私が言ったら、
そうだねって、りーちゃんは笑った。
今思えば、その笑顔はどこか悲しそうだった。