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喪われた記憶
第19章 刻み始めた時





―――『10分待ってやる』






そう言い残して父は家を出て行った。





「……………っう……」





抑えていた涙がとたんに溢れてくる。




やっと…紫苑に会えたのに。




やっと…悪魔から逃げられたと思ったのに。




また………




また…戻ってしまった。






もうここを出たら救いは求められない。






紫苑ももちろん、家族にも……







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