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喪われた記憶
第4章 触れられて…



何が起こっているのか分からない。



「…え?ちょっ…何?」


男の腕の中で暴れていると



『…俺のこと…覚えてないのか?』



上から、声が降ってきた。







とても悲しそうな声。


震えている。


私はなんだか申し訳ない気持ちになってきてしまった。


しかしそんな感情は振り払って、





「…心当たりが全く無いです…すみません」






ちょっとだけ冷たく返した。


だってこいつは誘拐犯。


情けをかける必要なんてないじゃない。








『……そうか』






すると、私を抱いたままベッドに倒れた。

当然私もベッドへと倒される。






「!…何するんですか!?」



『…詳しいことは明日だ。
今は朝までこのままでいてくれ。
そうじゃないと俺は………』



そのあまりにも悲しげな雰囲気に
私が折れるしかなかった。


「…分かりました」






こうして私は自分を誘拐したまだ顔も知らない男と
共に朝まで寝過ごしたのだった――――――





















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