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PINK
第1章 欲求

 手を拘束されているから、抱き合えない。

 愛しい男が私を刺す。

 男のモノが私の身体を駆け巡る。

 私は男の顔を瞳に映す。

 憂いを含んだ眼差しを向け、腰を動かし、ハァハァと吐息を漏らして、奥へ奥へと差し込んでいく。

 互いの身体が一つになる時。

 この時だけは特別な女だと思えた。

 繋がった身体に愛を吹き込んで下さる。

 欲しいものがすぐ手に入れば、それは当たり前となり、大事に思わなくなる。

 大事なものは、決して手の届く場所にはない。

 簡単ではないということ。

 男と私の関係は簡単ではない。

 簡単に手に入らないからこそ、欲望に掻き乱されながら、本性を暴かれていく。

 格好つけた鎧など役に立たない。
鎧を剥ぎ取られ、素っ裸にされてこそ、本当の自分になれた。

 喉から手が出るほど欲しいなら、必死で手を伸ばす。

 手を伸ばしながら、もがいてもがいて蜘蛛の糸がやっと手元に降りてきた時、穏やかさを取り戻せる。

 私はこの男が垂らす蜘蛛の糸を辿る。

 辿った先に見える世界に陶酔したいからだ。

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