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藍の果て
第8章 交渉

デイジー・クルスと別れて、数週間の月日が流れていた。
主(アルジ)からも何も連絡が無いという事は、恐らくデイジーと接触出来たに違いない。
あのどこか自信に満ちた男を屈服させる事が出来たのだろうか?
決して揺らがない真紅の瞳が、動揺と焦燥に主に歪まされる瞬間を想像すると、身体の芯が熱くなり背筋から脳天まで快楽の甘い痺れが駆け巡っていくようだ。
「シルヴァ様……」
愛しい主の名前を呟くと、幾日も顔を見ていない言葉を交わしていない切なさに身が震えた。
長らく生命のやりとりをしていない為か、二人が対峙した瞬間を想い酷く興奮する。
人間、生命の危機を感じた時には、動物的な交尾をしたくなると以前聞いたことがある。
あぁ……彼らは、そんな極地に導かれているのだろうか?
「サラ。サラ……ッ!」
隣の男に名前を呼ばれて引き戻された現実に、鬱陶しそうな視線だけを向けた。
「何よ? 人が考え事してる時は、横やり入れてこないで」
「そんな事言ってる場合か! シルヴァ様の不在がバルト中に知れ渡り始めてる。このまま、ここに滞在していれば、王を討とうとする兵も出てこないとも限らないんだ!」
「……分ってるわ。時間が無い事位……、バルトが今、内戦を起こすわけにはいかないもの」
「今、バルトはもっとでかい大物を狙っている。無駄な戦力を絶やす訳にいかない。
まして、他の都市に戦を仕掛けようなんて時に、王が不在じゃ示しがつかない」
「タイムリミットかしら。シルヴァ様を、呼び戻すのね……」
「あぁ、頼む」
任せて、という言葉を男に残して、サラは男と別れてカジノを後にする。
主の居場所は何かあれば、ここを訪ねろと渡されていた地図がある。
ここからそう遠くない、市場よりも更に奥地にある地図の三角の印を目指していた。

