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藍の果て
第10章 任務
つまらなそうに席を離れた男から、その場所を奪う為か横に座った男はリオも飲んだことのない名前を酒を頼んでいた。
グラスに注がれたそれは、ほんの少量でリオの傍にある酒とは違うのだろう。
氷の解けて崩れグラスに当たる音が、どこか場違いな気分にさせる。


「久しぶりだな」


先に沈黙を破ったのは隣の男だった。容姿は随分と変わってしまったが、その言葉だけでリオは肩の力が抜けていく。
アルコールのせいだけではないだろう、迷子の子供が親を漸く見つけたような感覚だ。


「やっぱり……やっぱり、デイジーなんだね?」


「ロン」


「え?」


男はただ静かに訂正を求めるように呟く。
バーテンダーの男の怪訝な視線に、リオも慌てて一度口を噤んだ。


「出るか?お前、気づいてないかもしれないが、顔が赤い」

「え?そう?わっ……」



確かめる為に頬に触れようとする手首を掴まれる。
やや強引に椅子から引き上げられたまま、ロン、という男はカウンターテーブルに幾らかの札を乱暴に置いてからリオの手を引いて店を出た。



身体が火照っていたのだろうか、夜風が心地よく頬を撫でればロンが言っていた通り赤くなっていたのかもしれないと思えた。
バルトの夜はパルバナよりも騒がしい。人々や街が眠らず灯りが消えることは無いからだ。
常にどこかがオレンジや白っぽい灯りを灯し、休まることを知らない都市。
ロンは、この街を慣れた様子で細道を潜り抜けていく。灯りから逃げるように……。



「ま、待って。どこに行くの?!」


灯りすらも殆ど届かない路地裏へとやってくれば、漸くロンの足が止まった。
逃げている?追っている?不可解としか思えないロンの行動には疑念を抱かずにはいられなかったが、振り返った彼は昔を彷彿をさせる優しい微笑みだった。
どこか困ったように肩を竦めながら微笑む、彼の愛想笑いとは違う不器用な笑い方は容姿は変わっても、隠しきれないようだった。



「そんな不安そうな顔するな。宿だよ。久しぶりに会ったんだ、俺だって色々話したい事もある。
 それとも、陛下と一緒に居る為に早く戻りたかったか?」


「なっ!?何でシルヴァが今出てくるの!?違うよ!」


「陛下を名前呼びする程親しいとは、恐れ入るよ」


「茶化さないでよ……、僕は本当に会えて嬉しかったんだから。……デイジーと」
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