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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
「同じ」だからこそわかる、独特の雰囲気。
ぼくと同じ「龍」の字を名に持つ男。
うれしそうな陛下の表情と翔龍に触れる手。
そして陛下を見つめる翔龍のまなざし…。
ぼくの心が騒ぎ立つ。なんだか嫌な感じだ。
磨墨を再開する。
集中できない。
ふと、ぼくはよそ見をした。
そのとき、翔龍もぼくに視線を向けていた。ほんの一瞬だったが、目が合った。
翔龍は、他の誰も気づかないほど幽かに目を細めた。
それがなんだか、ぼくに対して勝ち誇るかのような笑みに思えて、同時にぼくは確信した。
この翔龍は、ぼくと同じ。
陛下の寵を閨で受けたことのある男だ――