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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
「このたびは陛下の格別のご皇恩により都督の任を賜りましたこと、深く御礼申し上げます」
「うむ。有能なそなたにとっては、まだまだ役不足であろうが…」
「滅相もないことにございます。身に余る光栄にて、大役に気の引き締まる思いに存じます。引き続き研鑽を積み、陛下へのご恩返しが叶うよう役目に粉骨砕身いたす所存でございます」
「相変わらず、翔龍は頼もしいな」
「恐れ入ります」
陛下が微笑み、翔龍は一揖した。
和気藹々と会話を進めるふたりは、信頼関係で結ばれた主君と臣下である。
少なくとも、執務室の出入口や壁際に控える各係の内官の目には、そう映っているはずだ。
けれど、ぼくの勘はふたりの間に漂うそれ以上のものを察知していた。