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~花の玉手匣~
第5章 蒼い牙に抱かれて
陛下が使う硯はどれも、両手で持たねばならないほど重量感ある高級品だ。
落とさぬよう、墨液をこぼさぬよう、ぼくは慎重に歩を進める。
ところが、ここでまたもや視界に入ってしまった翔龍の顔が――余裕に満ちた澄まし顔が、ぼくの心を掻き乱す。
ぼくは割り込むように、わざと執務机と翔龍の間を通過した。
一礼してから壇上へ上がり陛下のもとへ硯を届ける。
「お待たせいたしましたご無礼をお許しください」
陛下の右側に硯を置き、代わりに空になった硯を下げる。
そして一礼し壇上を降りる。
毎日繰り返している馴れた作業だ。
ところが――