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堕散る(おちる)
第24章 step24十八段目…春
湯気が出て蓋をあけると、濃口の汁だったが具材は何も入っていない。

お膳に出された大皿に、衣を纏った具材が乗っていた。

「何ですか?この白いの…」

「片栗粉ですよ。これが火を通すと透明な膜になって旨味を閉じ込めるんです。椎茸や茸から入れてください。味が出て出汁になりますからね。」

ハルトは片栗粉が落ちないようにそぉっと椎茸を鍋に入れた。

鍋に入ったとたんに白い粉が透明になり膜になる。
それを確認しながらハルトとワタシは具材を入れていく。

「煮たったら、鶏肉はあまり入れずにさっと潜らせる感じがよろしいですよ。」

言われるままにお椀にとっていただく、片栗粉のヌルッとした食感が優しく、具材も柔らかく煮えていた。

大皿には片栗粉のまぶされていない鶏卵の黄身がある。卵黄だけが連なっているのだ。

「卵割りたかったのに…」

ハルトが卵黄をさして言う。

「これは殻はついていないんですよ。産まれる前の卵です。」

「産まれる前って…」

「雌鳥の卵管にある卵のもとです。まだ白身もなくて連なっているんですよ。」

「産まれる前なんだ…」

ハルトが静かに手を合わせ、スプーンで丁寧に掬って鍋に落とした。
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