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キミといる場所
第1章 出逢い

「おっはよーございまーす♪」
事務所のドアの開く音と、花穂ちゃんの元気な声が同時に聞こえた。
うおぉ…もうそんな時間かい。
「おふぁよー」
あくびをしながらソファーから起き上がった私は、大きくのびをした。
へんてこりんな姿勢で寝ていたせいで背中と首が痛い。
頭頂部に寝癖の気配を感じたが、ま、いっか。
「菜緒さん、また徹夜ですかぁ?」
アルバイトの花穂ちゃんは、
ロッカーの鏡で前髪を確認しながらふわふわと笑った。
緩く巻かれたミディアムボブが揺れる。
更衣室兼、休憩室兼、仮眠室。
仮眠室として利用する頻度が一番高い私は、
『徹夜王』という有難くないあだ名を拝命していた。
「あ、そうそう!菜緒さん、寝ぼけてる場合じゃないですよ!」
花穂ちゃんに引きずられて窓際に立つと、
午前9時の朝日がまぶしい。
三十路の川を2年前に渡った身にとって、
直射ほど恐ろしいものはない。
守るべきものは守らないと、と私は半歩下がって外を見た。
通りを挟んだ向かい側には賃貸マンションが建っている。
一階の店舗部分は左から美容室、花屋、弁当屋と並んでいたが、
弁当屋が閉店したあとしばらく『空き店舗』の貼り紙がしてあった。
その貼り紙の前にバンが停まっている。
そばにはこちらに背を向ける男性が二人。
「イ・ケ・メ・ン♪」
花穂ちゃんに小さく指差された男性が、
作業着の方の男性と何か話して通りを確認するように振り向いた。
「おお、ほんとだ、イケメンだ」
ほっそりとした長身に、長い手足。
イマドキっぽいシュツとした小顔。
遠目でもわかるほど真っ直ぐな鼻梁に少し長い前髪。
立ち姿に雰囲気がある。
花穂ちゃんが浮かれるのも納得できる、正真正銘のイケメンだった。
「弁当屋んとこ、お店入るのかなぁ?」
「ですよね!きゃー嬉しい♪」
今朝の元気な声はこれが原因か。
若いなぁ…。
あくびがもうひとつ出そうになったところで他のスタッフたちが出社してきた。
最後に入ってきたボスの相田が私の頭を見て笑いながら
「お、今朝の徹夜王は寝癖付きか」
頭をポンと叩いた。
事務所のドアの開く音と、花穂ちゃんの元気な声が同時に聞こえた。
うおぉ…もうそんな時間かい。
「おふぁよー」
あくびをしながらソファーから起き上がった私は、大きくのびをした。
へんてこりんな姿勢で寝ていたせいで背中と首が痛い。
頭頂部に寝癖の気配を感じたが、ま、いっか。
「菜緒さん、また徹夜ですかぁ?」
アルバイトの花穂ちゃんは、
ロッカーの鏡で前髪を確認しながらふわふわと笑った。
緩く巻かれたミディアムボブが揺れる。
更衣室兼、休憩室兼、仮眠室。
仮眠室として利用する頻度が一番高い私は、
『徹夜王』という有難くないあだ名を拝命していた。
「あ、そうそう!菜緒さん、寝ぼけてる場合じゃないですよ!」
花穂ちゃんに引きずられて窓際に立つと、
午前9時の朝日がまぶしい。
三十路の川を2年前に渡った身にとって、
直射ほど恐ろしいものはない。
守るべきものは守らないと、と私は半歩下がって外を見た。
通りを挟んだ向かい側には賃貸マンションが建っている。
一階の店舗部分は左から美容室、花屋、弁当屋と並んでいたが、
弁当屋が閉店したあとしばらく『空き店舗』の貼り紙がしてあった。
その貼り紙の前にバンが停まっている。
そばにはこちらに背を向ける男性が二人。
「イ・ケ・メ・ン♪」
花穂ちゃんに小さく指差された男性が、
作業着の方の男性と何か話して通りを確認するように振り向いた。
「おお、ほんとだ、イケメンだ」
ほっそりとした長身に、長い手足。
イマドキっぽいシュツとした小顔。
遠目でもわかるほど真っ直ぐな鼻梁に少し長い前髪。
立ち姿に雰囲気がある。
花穂ちゃんが浮かれるのも納得できる、正真正銘のイケメンだった。
「弁当屋んとこ、お店入るのかなぁ?」
「ですよね!きゃー嬉しい♪」
今朝の元気な声はこれが原因か。
若いなぁ…。
あくびがもうひとつ出そうになったところで他のスタッフたちが出社してきた。
最後に入ってきたボスの相田が私の頭を見て笑いながら
「お、今朝の徹夜王は寝癖付きか」
頭をポンと叩いた。

