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キミといる場所
第1章 出逢い

地方都市の郊外にある小さな建築事務所。
通りすぎたことすらないこの街に誘ってくれたのは、
新卒として大手建築事務所に勤務していた頃の上司、相田だ。
恋もおしゃれも辛い過去も、すべて生まれ育った都会に置いてきた私は、
この静かな街でひたすら仕事だけして生きていた。
「菜緒ちゃんなぁ…」
「はい?」
振り返ると相田は、髭で囲まれた丸顔に、
困ったような悲しいような優しいような…一言では表せない複雑な表情を浮かべている。
その顔を見た私も、困ったような申し訳ないような情けないような表情をしたのだろう。
相田は大きくため息をつき
「…ま、いいや」
深く背もたれに寄りかかった。
「無理すんな」
そう言いたかったに違いない。
返事もできず自分のデスクに向き直り、心の中で相田に謝った。
別に無理をしているつもりはなかった。
むしろ無理するぐらい働いて働いて…
なにも考えずにいられるのなら、
その方が楽だなんて思うことすらあった。
花穂ちゃんのように、自然に無邪気に生きて行くことはなかなか難しい。
通りすぎたことすらないこの街に誘ってくれたのは、
新卒として大手建築事務所に勤務していた頃の上司、相田だ。
恋もおしゃれも辛い過去も、すべて生まれ育った都会に置いてきた私は、
この静かな街でひたすら仕事だけして生きていた。
「菜緒ちゃんなぁ…」
「はい?」
振り返ると相田は、髭で囲まれた丸顔に、
困ったような悲しいような優しいような…一言では表せない複雑な表情を浮かべている。
その顔を見た私も、困ったような申し訳ないような情けないような表情をしたのだろう。
相田は大きくため息をつき
「…ま、いいや」
深く背もたれに寄りかかった。
「無理すんな」
そう言いたかったに違いない。
返事もできず自分のデスクに向き直り、心の中で相田に謝った。
別に無理をしているつもりはなかった。
むしろ無理するぐらい働いて働いて…
なにも考えずにいられるのなら、
その方が楽だなんて思うことすらあった。
花穂ちゃんのように、自然に無邪気に生きて行くことはなかなか難しい。

