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優しい彼の悪魔の顔
第8章 電話
なんて、答えよう。
リョーのことばかりを考えてたのは、私のほう。
でも、それは、リョーが私に思っている感情とは、違う。



「ミコ?」

「…うん。私も、リョーのこと、考えてたよ」



勇気を振り絞る。
まるで一生分の勇気を振り絞って、告白をしているような気分だ。



「ほんとに?俺の、どんなことを考えてたの?」

「どんなって、別に…」

「なに?」



くすりと笑ったあとのその問いに、ミコはリョーのあの顔を思い出した。
ミコの反応を楽しみながら、自分だけ余裕のある、あの笑い顔。




「リョー?」

「ん?」

「もしかして、お酒飲んでる?」




ミコは、変な空気になりそうな予感がして、話を変えようと聞いた。

「うん、飲んでるよ。なんでわかるの?」

「なんか、変なスイッチ入ったときみたいな話し方、するんだもん…」

「へぇ、よくわかったね、ミコ」



話を変える予定が。
逆にミコは自らその話題を振ったことに気がついたときには、もう遅かった。


「それで?ミコは、俺のこと、考えてたんだ?なんで?」

「なんでって、知らないよ、ただ、たまに思い出してただけだよ」

「何を?」



ミコは言葉につまる。
リョーには、バレてる。

あの日のこと、リョーに思うがままに遊ばれ、それに反応してしまっていた。
それだけじゃない。
あの快楽を、ミコが忘れようとすればするほど、なぜか体が求めるように熱を持ってしまうこと。



「何って、現場で、一緒に仕事したこととかだよ」

「ふーん。そうなんだ」


楽しむような、リョーの声。





「てっきり俺に抱かれたこと、思い出してくれてると思ったのに、残念」
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