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優しい彼の悪魔の顔
第9章 視線
次の土曜日、リョーからの電話。

ミコは机の上で鳴る携帯を、とることができなかった。



あんなことして、それをリョーに聞かれて、どんな顔をすればいいかわからない。



それから何度か、電話の他にもメールが来た。
それも、ミコには返信する勇気がないまま、一週間が過ぎた。






やっとミコの仕事が終わった頃には、オフィスには数人の社員が残っているだけだった。
時計を見ると、ちょうど20時を回ったところ。

せっかくの金曜の夜、ほとんどの人は休みをゆっくり過ごすために、なんとか定時で仕事を終えようとする。

なんの予定もなかったミコは、会議の資料の作成を自ら願い出た。
おかげで、こんな時間。



それでも今のミコは、仕事に打ち込むほうが楽なのだ。

一人で家に帰れば、またどうしようもない感情に襲われる。


リョーへの恋しさ。

同時に痴態をさらけ出した自分を戒めたくなる気持ち。

そして、忘れようと思えば思うほど、鮮明になるリョーの淫らな顔。



ミコは心も体も、完全にリョーに侵食されていた。
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