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ただそこに君がいた
第1章 プロローグ
『なあイチカ…』
降りしきる六月の雨。
『お前さ、まだ怒ってんの…?』
傘をたたく雨音が、ひたすらにこの耳を塞ぐ。地面のコンクリート、足元に転がる石も、頭を垂れた花も、みんなそれぞれ雨粒に叩かれ続けては音を出す。しばらく、煩いほどの静寂に耳を預けた後、オレは一夏に告げた。
『悪いけど…
オレはもう、ここへは来ないからな。』
強がり言ってるんじゃない。
オレは決めたんだ。
『だから、一緒に来いよ…』
連れて行くことにした。
だってお前はオレの一部なんだから。
『オレと生きよう、一夏。』
お前の全部をさらっていくよ。
もう決めた。抵抗したって無駄だからな。
一夏は泣いた。
大丈夫、もう一人じゃないだろ?だから泣くな、泣くな。笑えよ一夏。笑え。どうせお前には、オレだけだろ。ずっと一緒だったじゃないか…だから、これからだって…もう離れずにやっていこうよ。
傘を畳んだオレ達を、雨は容赦無く打ちつけた。強く強く、とめどなく打ち続けた。