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妄想シンドローム
第3章 類はなんとやら
目深に被った帽子、濃い色のサングラス、そしてマスク。
いかにも怪しげな恰好をした女が、これまた怪しげに辺りを見渡しては道を進み、また見渡しては歩くという行動を繰り返している。
このような人物を見掛けた通りすがりの人に、よくもまあ通報されなかったものだ。
しかし当の本人――杏璃なのだが――は、至極真面目に変装をして、知り合いに見付からないようにしているつもりだ。
というのも杏璃が今向かっているのは、大学近くの書店だ。買うのはもちろん、官能小説。
買ってきた本はすべて読み尽くしてしまい、新たなる妄想を掻き立てる材料を欲しての行動だ。
それに加えて官能小説だけではどうにも映像として浮かばないため、漫画等のリアルに体位などが描かれている物を手に入れたいと思っている。
問題は買う場所だ。以前に春馬と行った書店は、杏璃の生活区域にあり、知り合いに会ってしまう可能性大だ。
そこで思い当たったのが、大学近辺にある小さな書店。そこは細い路地にあり、司とまだラブラブだった時期に、ランチをしようと空いた時間にデートがてら店を発掘するために適当にぶらついていたときに見付けた。
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