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溺れる恋は藁をも掴む
第4章 心の景色
母さんは続けた。

「お母さんが一生懸命働いても、
お給料なんて、
たかが知れてる。
お父さんには敵わない。
お父さんは愚痴を言いながらも、
仕事を全うしょうとしてる。
確かに家族は迷惑よ。
本当に嫌気がさすわ。
お母さんも本音を言えば、
そう思う。


だけど、現実はね‥‥
甘くないの。
堪えられなくなって、
晶と柊を連れて出て行っても、
お母さん、
あなたたちを幸せにする自信ない。


ごめんね。

お母さんに力なくて。
お母さんに何か才能があればね‥‥
あなた達を養うくらい、
稼げる仕事をしていたのならね‥‥
あなた達に我慢なんてさせなくて済んだ。

勿論、自分にもね。

でも、
限界ならいつでも言ってね。
苦しい生活にはなるし、
不自由させてしまうかもしれないけど、
あなた達を犠牲にしてまで、
守るものなんてない。
あなた達まで壊れてしまうなんて‥‥‥

そんなの嫌よ。

お母さんにも覚悟はある。
だから、晶‥‥‥
一人で悩まないでね。
いつでもその時は言って。


あっ! 冷やし中華のびちゃう。
早く食べなさいね」

そう言うと部屋から出て行った。



母さんだって、辛いのは十分分かる。
俺をちゃんと庇ってくれた。


ぼんやりした頭で、
お盆に手を伸ばす。


のびてしまった冷やし中華は不味かった。


腹がたっても、
やっぱり腹は空く。

涙がまた溢れた。
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