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溺れる恋は藁をも掴む
第6章 満月の夜に
「そんな時、
高3の時の俺の話をするんだ。
一家が路頭に迷わなかったのは、
親父の掛けていた保険があったからって。

いきなり仕事先でクモ膜下で倒れて、
病院で呆気なく亡くなってしまった事。
家族が一家の大黒柱を急に失ったショツクは、
凄く大きかった事。

そのまま命が助かったとしても、
バカ高い治療費を請求された現実や、
仮に病気の後遺症が残ったら、
家族の負担が計り知れなかった事。

そういうの、親父は考えてたんだろうな?
家のローンも、自分が死んだらチャラになるもんを選んでいたし、死んだ後も家族が暮らしてゆけるだけのもんを保険で残していてくれたんだ。

俺が大学に入れたのも、
母さんと弟が今も不自由なく生活してゆけるのも、
親父が定期的に保険を見直して、そういうもんを選んでくれていたお陰。

感謝してんだ。

まぁ、そういう事も後々知ったんだけどね」

「うん」



覚えてる。
アキのお父さんが亡くなって、
アキは1週間学校を休んだ。

学校に来た時、
どう声を掛けていいか分からなかった。

でも、アキは無理した笑顔で、

「やっと落ち着いたわ。
落ち着いたとこで、期末だもんな。
忙しいな」



って言いながら、心配するクラスメートに気を遣わせないようしたんだ。

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